意外と古い?静電気の歴史とは?
静電気の歴史は、意外にも古く紀元前にまで遡ります。
この記事では、そんな静電気の歴史について解説していきます。
古代ギリシャの哲学者ターレス──電気の始まりは琥珀から
静電気の最初の記録は、紀元前6世紀のギリシャ・ミレトスに生きた哲学者ターレス(Thales)の観察です。
後世の記録によると、ターレスは琥珀(こはく)を布でこすったとき、羽毛やホコリが引き寄せられる現象に気づきました。
このとき使われた琥珀は、ギリシャ語で「ēlektron(エーレクトロン)」と呼ばれており、これが後の「electric(電気)」や「electronics(電子)」といった英単語の語源となっています。
もちろん当時は、なぜ引き寄せが起こるのかは分かっていませんでした。
しかしターレスの好奇心と観察眼が、“電気”という概念の最初の扉を開いたといえるでしょう。
ターレスは哲学者であり科学者でもあった
ターレスは「ギリシャ七賢人」のひとりとして知られる哲学者ですが、同時に天文学・数学の先駆者でもありました。
彼は「万物の根源は水である」と主張し、神々ではなく自然そのものを理性で説明しようとした最初の人類の一人とされています。
また、彼が日食を予言したり、ピラミッドの高さを影から測ったという逸話も伝えられています。
これらは後世の史家(ヘロドトスなど)の記録に基づく伝承であり、確証はありませんが、彼が数学的思考を重視していたことを示す象徴的なエピソードです。
さらに、幾何学では「円の直径に対する円周角は直角である」という定理がターレスの名で知られ、今日でも「ターレスの定理」として学校で学ばれています。
約2000年間の停滞──そしてギルバートによる再発見
ターレスの発見から長い間、人類は静電気の正体を解明できませんでした。
実験という概念自体が確立していなかったため、約2000年にわたり研究は停滞していたのです。
それを再び動かしたのが、1600年にイギリスの物理学者ウィリアム・ギルバート(William Gilbert)でした。
彼は著書『De Magnete(磁石論)』の中で、琥珀だけでなくガラスや硫黄など他の物質もこすると同様の力を生じることを確認しました。
ギルバートはこの力を「electric force」と名付け、磁気とは異なる現象として区別します。
このとき初めて、現代につながる「電気(electricity)」という言葉が誕生したのです。
フランクリンの凧あげ実験──雷が電気だと証明した男
1752年、アメリカの政治家・科学者ベンジャミン・フランクリンが、雷が電気の一種であることを証明したとされています。
雷雲の下で凧を揚げ、糸につないだ金属の先に火花が飛ぶのを観察したという有名な実験です。
実際に彼自身が行ったかどうかは諸説ありますが、この実験により「雷=電気現象」という考えが広まり、電気研究が大きく進展しました。
なお、この実験は非常に危険で、同様の方法を試した他の研究者が感電死した例もあります。
現代では絶対に真似してはいけません。
電気理論の確立──クーロン、ボルタ、オーム、ファラデー
18世紀後半から19世紀にかけて、電気に関する理論は一気に体系化されていきます。
・1785年:シャルル・クーロンが、電気の引力・反発力を定量化する「クーロンの法則」を発見。
・1800年:アレッサンドロ・ボルタが世界初の電池「ボルタ電堆」を発明し、連続的な電流を得ることに成功。
・1827年:ゲオルク・オームが「電圧・電流・抵抗」の関係を示す「オームの法則」を発表。
・1831年:マイケル・ファラデーが「電磁誘導」を発見し、モーターや発電機の原理を確立。
さらに19世紀後半、ジェームズ・クラーク・マクスウェルが電磁場の理論を統一し、現代物理学の基礎を築きます。
こうして電気は、単なる自然現象から再現可能な科学へと姿を変えたのです。
実用化の時代へ──エジソン、ヘルツ、マルコーニが切り拓いた近代
19世紀後半、産業革命が進む中で電気は急速に実用化されていきます。
トーマス・エジソンは白熱電球を改良し、長時間使える照明として実用化しました。
夜の街に「人工の光」をもたらしました。
ハインリヒ・ヘルツは電磁波を実験的に証明し、グリエルモ・マルコーニは無線通信の実用化に成功しています。
これにより、人類は距離を超えて情報を伝えられるようになります。
以後、電気技術は真空管・ラジオ・テレビ・コンピューターへと進化し、やがてインターネットやAI、電気自動車といった現代社会の中核を支える存在となりました。
まとめ
紀元前のターレスが琥珀をこすって不思議な力を感じた瞬間から、電気の物語は始まりました。
2000年以上の歳月を経て、電気は産業、通信、そして情報社会の基盤へと発展しています。
いま私たちが手にしているスマートフォンの一つひとつも、そのルーツをたどればターレスが見た小さな“静電気の引き寄せ”に行き着くのです。
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