冬の道に撒かれている白い粒は何?
冬の道には、白い粒が撒かれていることがあります。
この記事では、そんな白い粒が撒かれている理由について解説していきます。
白い粒の正体は「凍結防止剤」
冬の道路に撒かれている白い粒の正体は、「凍結防止剤」と呼ばれるものです。
日本の高速道路や国道、主要な幹線道路では、冬季になると路面凍結による事故を防ぐため、計画的に凍結防止剤が散布されています。
凍結防止剤の主成分として最も多く使われているのが、塩化ナトリウム(NaCl)です。
これは一般的に「塩」として知られている物質ですが、道路に撒かれているものは食用ではなく、工業用として製造されたものです。
そのため、不純物が含まれている場合もあり、口にすることはできません。
凍結防止剤は、路面が凍結する前あるいは凍結するおそれが高い状況で使用されます。
路面が凍ると、タイヤのグリップ力が大幅に低下し、スリップ事故や追突事故が発生しやすくなります。
特に高速道路では、ひとたび事故が起きると大規模な交通障害につながるため、凍結防止剤は冬の安全対策として欠かせない存在です。
なぜ凍結防止剤で路面が凍らなくなるのか
凍結防止剤が効果を発揮する理由は、「凝固点降下」と呼ばれる物理的な現象にあります。
水は純粋な状態であれば、温度が0℃になると凍り始めます。
しかし、水に塩などの物質が溶けると、凍り始める温度が下がり、0℃では凍らないのです。
凍結防止剤として使われる塩化ナトリウムは、水に溶けることで水分の凝固点を下げ、路面に残った水や雪が凍りにくい状態をつくります。
理論上、塩化ナトリウム水溶液は濃度が約23%のときに凝固点が最も低くなり、およそ−21℃まで下がるとされています。
ただし、実際の道路では常に理論値どおりの効果が得られるわけではありません。
路面に存在する水分量、凍結防止剤の散布量、気温、交通量、日射の有無など、さまざまな条件によって効果は左右されます。
そのため、「撒けば絶対に凍らない」というものではなく、凍結リスクを下げるための対策として用いられています。
雪が積もっていないのに散布される理由
凍結防止剤は、雪が積もっているときだけでなく、雪が見当たらない状況でも散布されることが少なくありません。
これには、明確な理由があります。
路面凍結は、必ずしも降雪を伴うわけではありません。
たとえば、日中に降った雪が溶けて路面に水分が残っている場合、夜間から早朝にかけて気温が下がると、その水分が凍結するおそれがあります。
また、雨の後に急激に冷え込んだ場合や、放射冷却によって路面温度だけが下がる場合にも、凍結が発生することがあります。
特に注意が必要なのが「ブラックアイスバーン」と呼ばれる状態です。
これは、路面が薄い氷で覆われているにもかかわらず、見た目では凍っていることが分かりにくい状態を指します。
ブラックアイスバーンは非常に滑りやすく、ドライバーが異変に気づいたときにはすでにスリップしているケースも少なくありません。
このような危険を未然に防ぐため、凍結防止剤は予防的に散布されることが多いのです。
道路管理者は、気温や降水量だけでなく、「路温(路面温度)」の予測データや、巡回による現地確認をもとに、散布の必要性を判断しています。
凍結防止剤と融雪剤の違い
冬の道路対策として使われる薬剤には、凍結防止剤のほかに「融雪剤」と呼ばれるものもあります。
融雪剤の代表的な成分は、塩化カルシウムです。
塩化カルシウムは、水に溶ける際に発熱する性質を持っており、積もった雪を素早く溶かす効果があります。
理論上の凝固点は約−50℃と非常に低く、即効性が高いため、大雪時や短時間で除雪効果を出したい場面で使用されることが多い薬剤です。
一般的には、
・凍結を未然に防ぐ目的で使われるのが凍結防止剤
・すでに積もった雪を溶かす目的で使われるのが融雪剤
というように、用途によって使い分けられています。
なお、塩化カルシウムは強い毒性を持つ物質ではありませんが、皮膚や粘膜に対する刺激性があります。
そのため、素手で触れたり、誤って口に入れたりしないよう注意が必要です。
車や環境への影響と注意点
凍結防止剤は道路の安全確保に大きく貢献していますが、影響がまったくないわけではありません。
特にドライバーにとって身近な問題が、車のサビ(塩害)です。
凍結防止剤に含まれる塩分が車体や下回りに付着すると、マフラーやブレーキ部品などの金属部分が錆びやすくなります。
冬場に高速道路や雪道を走行した後は、下回りを含めて洗車を行い、塩分を早めに洗い流すことが推奨されています。
また、凍結防止剤の塩分は、道路構造物や周辺環境にも影響を与える可能性が高いです。
コンクリート内部の鉄筋腐食や、土壌への塩分蓄積による植物への影響などが指摘されており、近年では散布量の最適化や、資源を再利用した凍結防止剤の活用など、環境負荷を抑える取り組みも進められています。
まとめ
冬の道路に撒かれている白い粒は、凍結事故を防ぐための凍結防止剤です。
雪がなくても散布されるのは、見えない凍結から安全を守るためでした。
冬道では薬剤の存在を意識し、慎重な運転を心がけましょう。
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